金沢市「ル・ミュゼ・ドゥ・アッシュ」のパルフェ・シュペール~美味しいものを食べるために、私は生きているのだ その3

パフェ。フランス語ではパルフェ。このデザートの名前は、フランス語の「完璧な」から由来するという。フルーツ、アイスクリーム、ゼリー、スポンジケーキ、シリアル、そして様々なソースなどなど……それらを一度に味わえるデザートは、完璧と表現するのに相応しい。

今日、金沢市ル・ミュゼ・ドゥ・アッシュ」で頂いたのは、その「完璧」をさらに強調する形容詞がかぶせられた「パルフェ・シュペール」。シュペールはフランス語で「素晴らしい、すごい」という意味。一日限定30食のデザートを目当てに開店直後に訪れた僕と妻の期待は、すでに高まっていた。

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ル・ミュゼ・ドゥ・アッシュは、金沢の中心部、名園兼六園にほど近い、県立美術館の建物の中にある。週末で観光地のすぐそばにあるにも関わらず、緑を臨むカフェは閑静な雰囲気で僕たちを迎えてくれた。

パルフェ・シュペールはサーブまで時間がかかるという。先に飲み物を頂く。塩梅良く淹れられたダージリンミルクティーを飲み、窓の外の緑に目を休めながら待つことしばし、「素晴らしく完璧」なそれは姿を現した。

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目にも鮮やかな赤い果物は、桃のコンポートとフランボワーズ。白いクリームに見えるものは、バニラアイスと、クレームダンジュというチーズケーキの一種。その下に隠れているピンク色の層は、桃のジュレ。なるほど、どこから見てもどこから攻めても実に隙がない。完璧である。

クレームダンジュを一口、スプーンですくって口に。ふわふわとした綿のような食感のそれは、確かなコクと香りがあるにも関わらずさっぱりとした後味を残して溶けていく。まるで熟したトマトのように赤い桃のコンポート。ほどよく冷えた甘さと鮮烈な爽やかさが舌の上に広がる。言葉もなく食べ進むと、透明なピンク色のジェルが現れる。とろりとした食感は予想通りだが、決して甘すぎず、すっきりとした味わい。その中にまた、桃のコンポートが隠れている。僕の知識ではわかりようもないが、おそらく上に載ったコンポートとジュレ、ジュレの中にあるコンポートの桃は、それぞれ違う種類だろう。それぞれの風味が渾然一体となって涼し気な余韻を残していく。さらに極めつけは、添えられたまさかのオリーブオイル。ひと回しかけると、甘さが際立ち濃厚な味わいへと変化する。お洒落でない比喩を許してもらえるならば、西瓜にかける塩のよう。意外な組み合わせが、予想もしない美味しさを生み出していた。

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Super!(シュペール!) 素晴らしい。実に素晴らしい。

徹底して上品で、一つの器の中にあらゆるスイーツの魅力が盛り込まれている。繰り返しになるが、なるほど、完璧だ。

こんなに美味しい物を味わえる幸せを噛み締めながら、僕たちは夏の陽射しが降り注ぐ美術館の中の店を後にしたのだった。