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金沢市「ル・ミュゼ・ドゥ・アッシュ」のセ・ラ・ヴィ~美味しいものを食べるために、私は生きているのだ その1

近頃はテンションが上がらない日が続いた。ブログもうだうだと愚痴を数行書いただけでお茶を濁してばかり。大げさに言うならば、人生に疲れていた。こんな風に気分が落ち込むことは、僕にしては珍しくはないが、何度も経験している癖に未だにこの落ち込みから立ち直る特効薬は見つからない。

ただ、幸いな事に、今回はとてもよく効くクスリに出会うことが出来た。

 

今日、縁あって口にすることが出来た、1ピースのケーキ。

それは、人生という名のケーキだった。

cake.tokyo

石川県が誇るパティシエ辻口博啓氏が、1996年のフランス菓子のコンクールで見事優勝を勝ち取った作品。辻口氏が製菓指導をしたNHK朝ドラ「まれ」にも登場していた。今日僕が口にしたのは、上記リンク記事の自由が丘のお店ではなく、金沢のル・ミュゼ・ドゥ・アッシュで買い求めたもの。

以前にもこのケーキを食べたことはあるはずなのだが、今回は何が違ったのだろうか、信じられないほど美味しかった。雪のように口の中で溶けていくホワイトチョコのムース、ピスタチオのムースの香り、フランボワーズの酸味が絶妙なコラボレーションを産み、甘く、それでいて甘すぎず、なぜか切なささえ感じるような。デザートを食べて切なさを感じることなど、この「これが人生だ」と名付けられたケーキ以外には、そうそうないだろう。そう思えば、六角形のシンプルな外観さえ、人生の象徴のように思えてくる。丸や四角形のケーキが多い中で、あえて六角形、しかし、白いムースに包まれフランボワーズが一つ載せられただけのシンプルさは、目を喜ばせる華美なケーキが多い中でかえって目を引く。そして、フォークを入れた時に現れる、ショコラとフランボワーズのムース。これも決して華やかではないが、だからこそ存在感がある。

辻口氏が「人生」と名付けた理由は、彼がこのケーキに人生を賭けたから。だから、このケーキそのものが人生の象徴というわけではない。そのはずなのだが、このケーキのような人生が送れるとすれば、それはとても幸福なことだと、思う。

そんなことを考えながら、このところ俯いていた心が、前を向いていることに気付いた。

少なくとも、もう一度このケーキを口にするまで、また人生を頑張って生きていこうと、そう思った。