心頭滅却するほどの暑さではない。と言うか心頭滅却うんぬんの言葉は火に焼かれながら宣ったものだからね、夏の暑さとかではなく。

暑いときに、暑い暑いと口に出すのは、出来る限り避けるようにしている。それは僕があまのじゃくだから……という理由も間違ってはいないが、暑い暑いと周りの誰かにぶつぶつ言われるのが嫌いなのだ。イラっとくるのだ。だから自分も言わないようにしている。

しかしふと考えてみるに、どうもこんな風に、変に無理をしたり我慢してしまうのは、もしかすると僕の悪い癖なのかも知れない。今日のような日に暑い暑いとぶつくさ言っている同僚のほうが、ストレスは少ないのかも知れない。少なくとも暑いという愚痴を聞くたびにストレスを溜めている僕よりは、愚痴を言っている人間のほうがストレスを発散できているだろう。

何だか不公平だと思わなくもない。が、この程度のことをあげつらって、暑いと言わないでくれと言うのも、少し違うと言うか、無用の波風を立てるだけなのでやりたくない。それなら僕が我慢したほうがマシ。……うん、やっぱり僕は、損な性格をしているのかも知れない。