リサイクルのインクカートリッジのビジネスモデルに感心した話

ワープロ(専用機)を使っていた頃の癖が未だに抜けずに、エプソンキヤノンの一般的なプリンタのインクカートリッジのことをつい「インクリボン」と言ってしまうおっさんである。一応、今もインクリボンはあるみたいだけどね、ドットインパクトプリンタなんかで使われてる。

 

さて本題。自宅ではエプソンのプリンタを使っているが、そのインクカートリッジとして、いわゆるリサイクル品を先週、近所の家電量販店で購入した。純正品の3分の2くらいの値段ではあるが、6色セットで購入したのでそれなりの値段である(それにしても最近のプリンタは本体は安いがインクは実に高い)。早速交換したところ、なぜか1本のカートリッジが正しくセットしても認識されなかったのである。要はハズレを引いたわけだ。今までリサイクルカートリッジで不良品をつかんだことはなかったのだが、はじめての経験である。余談だが、プリンタを使おうとしていた嫁さんには、安物買いの銭失いだのなんだのとさんざん文句を言われた。

で、翌日にそのリサイクルカートリッジのメーカーのお客様コールセンターに電話をかけた。ちなみに、製品の箱に記載されていた連絡先は、メーカーの住所とお客様コールセンターのフリーダイヤルのみ。今どき、しかもPC周りの品物を扱う会社が、WebサイトのURLも載せていない(Webサイト自体は検索するとちゃんと存在した)というのは珍しいんじゃないかと思ったが、その理由については後で僕の想像を述べることにして、とりあえずフリーダイヤルに電話した話を続ける。

電話に出たのは慣れた雰囲気の女性オペレータ。おたくの会社のインクカートリッジを買ってプリンタにセットしたところ、正しく認識されなかった。プリンタのメーカーと機種、購入した製品の型番およびどの色が不良品だったか、何度か抜き差しをしてみたか、について問われたので、答える。そして、これだけの内容を聞いただけで、代替品を送ると言ってきた。改めて状況の確認を求めることもなしに、である(もっとも、電話をかけたのは職場の休み時間だったので、確認をしろと言われても現物が目の前になく答えようがなかったが)。電話で話しはじめてから1分も経っていなかっただろう。別に喧嘩腰で構えながら電話したわけではないが、何だか拍子抜けした。

しかも、代替品の送付のために聞かれたのは、住所氏名と連絡先電話番号のみ。商品の購入店舗や購入日時、あるいはレシートの有無についてはまったく聞かれなかった。これ、仮に僕が悪意を持っていちゃもんをつけたり、手元に商品がない(購入していない)のにクレームを入れたとしても、向こうには分からないんじゃあるまいか。あ、不良品を返送してくれ(もちろん返送費用はあちら持ちで)とは言われたが、それだって「もう捨ててしまった」と言い張れば、おそらく通りそうな雰囲気であった。

ともあれ電話は実にあっさりと、5分もかからずに終了。対応はマニュアルどおりという感じではあったがきちんとしており、不快なものではなかった。

そして、翌日の午前中には早くも代替品が届いた。小さいものだからてっきりメール便で届くのかと思いきや、Amazon並に過剰に梱包されてきた。もっとも、かなり質のいい返信用封筒が同封されていてかさばったのもあるのだろうが。封筒はクッション付き、さらに返品時にインクが漏れないようにキャップを留める輪ゴム、そしてペットシートのような厚手の吸湿シートも同封されてきた。もちろん、お詫び状もついていた。これは印刷された、テンプレートどおりのものであったが、特に失礼に思ったり気に障るところはなかった。

肝心の代替品だが、プリンタにセットしてみると無事に認識、正しく動作した。わずかに一日不便を感じただけで済んだのは、一般消費者向けの、しかも純正品に比べて安い商品のサービスとしては上出来ではないかと思う。

 

リサイクルのインクカートリッジというものは、もちろんリサイクルという時点で原価がある程度節約できているわけだが、それだけで商売できるほど甘くもないのであろう。商品自体で出せる利益は、おそらく微々たるものではないだろうか。となれば、経費、例えばユーザーサポートや製品不具合の対応にかかる金額をいかに削るかが商売が成り立つポイントということになる。このリサイクルカートリッジの会社は、不具合がある程度発生することは見越していて、顧客対応としては基本的に「代替品を送る」という対応のみで通すことで、それらの経費を削っているのだろうと思われる。販売店がどうとかレシートがどうとかを問わなかったのも、そんなことを聞く手間よりさっさと代替品を送ったほうが(たとえ一部の顧客が虚偽の申告をしたとしても)早いし安くつく、ということなのだろう。また、上述したように商品のパッケージや説明書に自社WebサイトのURLを書かないのも、問い合わせチャネルを電話のみに一本化して効率化を図っているのだろう。

それでいて、少なくとも僕が体験した感覚からすると、顧客満足度はさほど落ちていない。ぶっちゃけ正規の(純正品の)価格より安い金額しか払ってないので、ここまでサポートしてくれれば十分と僕などは思った。なるほど、どんな商売にも企業努力は必要なのだなと感心した出来事であった。